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上原善広「日本の路地を旅する」 13年かけ500カ所 新世代の被差別部落ルポ(産経新聞)

 ルポライターの上原善広さん(36)は、中上健次にならって被差別部落を「路地」と呼ぶ。13年を費やして日本全国の500以上の路地を訪ね歩き『日本の路地を旅する』(文芸春秋・1680円)をまとめた。身を削りながら地を這(は)う極上のルポルタージュだ。自らの出自を重ねつつ、被差別部落の「いま」を、曇りのない言葉で再構成してゆく。“格差社会”を問い直す現代人の必読書に推したい。(篠原知存)

                   ◇

 「東京で『部落問題は解消傾向にある』と話すと、『そんなのあったの?』といわれる。大阪で同じことを言うと、『解消なんてしてない!』と怒られる。この問題には、それぐらい地域差があります」

 ◆ひりひりした当事者感覚

 自身は昭和48年に大阪の路地で生まれた。「差別を受けたことがない世代」と語る。「一生に一回、結婚差別というのはあるかもしれない。それぐらいですね。路地といっても、じつは何もほかと変わらない」

 「それぐらい」という言葉を、聞くこちらは決して軽くは受け止められないのだが、本書はそんなクールさに貫かれている。旅人の目線は、ルポルタージュの目線。ただし、著者の実体験に由来するひりひりとした当事者感覚が、ふらりと通り過ぎる旅であることを許さない。

 その道行きは驚きに満ちている。江戸時代にも牛肉は食べられていた。新潟以北に路地がないといわれるのは解放運動団体が組織されなかったから。沖縄のエイサーは路地の者が移住して伝わった…などなど、目からウロコの事実を次から次に描き出してゆく。

 「文化は重層的なもの。下々の者がいて社会は成り立ってきた。歴史は連続しているのに、タブーになっていることがかなりあるのが残念です。どんどん解明されればいいと思いますね」

 ◆規制する意味わからない

 生と死は表裏一体。さまざまな営みのさまざまな段階を担う人たちがいる。通読すると、見ずにすませてきた明快な事実を、いやおうなく意識させられる。「いま、古地図から路地の地名が消されてます。自主規制する意味がわからない」と上原さんはいう。

 イデオロギーやタブーが邪魔をして語れなかったもの。差別者と被差別者の歯がゆい乖離(かいり)。「路地をつなぐ糸」をたどる旅は、人々を等しくつなぎ直す糸の不在をも強く意識させる。

 「たとえば『引っ越せばいいのに』というのも、素朴な疑問です。運動家にいうと『無知だ、想像力不足だ』と怒られる。だけど逆も言えるはず。路地の人も一般の人も、想像力がお互いに足りない。だからもう一度、一から考えたいと思うんです」

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